ご覧頂きありがとうございます。クトゥルフ神話の誕生はラヴクラフトの作家生活の時代(1922 – 37)であるがその後、オーガスト・ダーレスらによって書き継がれ、ユニークな恐怖神話として知られていく。これが再燃した背景には、1970年代にペーパーバックで復刻されたことが大きな転機であると考えられている。そしてその人気を受け、1981年、ケイオシアム社によってクトゥルフ神話をもとにしたRPG『Call of Cthulhu』(以下、『COC』)が制作された。RPG(ロールプレイング・ゲーム)は1974年の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に始まるアナログゲームの一形態で、プレイヤーは自分の分身となるキャラクターを作成し、冒険の物語を楽しむというものである。D&Dは大人気を博し当時、誕生したばかりの個人用コンピューターで無限に『D&D』を遊びたいと思った大学生ロバート・ウッドヘッドが作ったのが、デジタルなRPGの元祖『ウィザードリィ』である。日本では、デジタルRPGの普及が先行したため、『D&D』などのアナログなRPGは、TRPG(テーブルトークRPG)という日本独自で呼ばれるようになる。クトゥルフ神話のTRPGである『COC』が『クトゥルフの呼び声』というタイトルで翻訳され、ホビージャパン社で翻訳発売されたのが1986年。この作品は『D&D』などのヒロイックなファンタジーRPGとは異なり、ホラーと対峙する冒険として、“正気度”という数値が設定され、クトゥルフ神話の小説の主人公のように狂気に墜ちてしまう様子が再現されていたことで大人気を博した。1990年代に発売が途切れたものの、2004年にエンターブレイン(現在はKADOKAWAの一部)から『クトゥルフ神話TRPG』として『COC』の第6版が翻訳発売された。以降、地道なサポートが継続し、TRPG業界では定番作品のひとつとなっていったが2010年ごろから、テレビアニメ『這い寄れニャル子さん』などの影響で露出が増え、ニコニコ動画でのブレイクを経て、ファンが大量に参入するようになった。そして現状、TRPG=クトゥルフと一般で認識されるほど、クトゥルフは大きな牽引力を示している。その理由として充実した基礎、分かりやすい題材、知名度、おもしろい導入的な作品群などが挙げられ、日本のサブカルチャー全般に浸透しつつあるのだ。
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